「ゴング格闘技」と「KIMURA」の終わり

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いまや数少ない格闘技専門誌「ゴング格闘技」が、今月発売された300号をもって休刊になった。

 
多分、300号のうち、200冊以上は今でも保管している。毎月23日に買い、一ヶ月かけて端から端まで読む。それくらい内容が濃い。

ゴン格の記事で知った国内外のファイターは少なからずいた(アマチュア時代のロンダ・ラウジーもゴン格で知った)。ゴン格らしい深堀り型のインタビューはファイターたちの人となりが感じられ、UFC fight passやAbema TVで格闘技中継を観る際にそのファイターが出れば、思い入れが感じられた。その積み重ねがドラマとなり、格闘技観戦をさらに面白くしてくれた。

今の時代は情報が溢れている。しかし、ゴン格でなければ掘り出せない、伝えられない情報は間違いなく存在し、ゴン格の休刊はそれらの情報が無になると同義だ。残念。

スタッフのみなさま。毎月の刊行お疲れ様でした。またの復活を待っています。ひとまず、長らく楽しませて頂きましてありがとうございました。

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そのゴン格で2008年から2011年にかけて連載されていたのが増田俊也氏著「木村政彦はなぜ力道山を殺さなかったのか」。

大学時代に柔道を愛好していた増田俊也氏の「史上最強の木村政彦力道山に負けるはずがない」という視点から始まったノンフィクションで、木村政彦の生涯を通じて、時代背景や格闘技について書かれた傑作。後に単行本化されベストセラーとなった。

その「木村政彦はなぜ力道山を殺さなかったのか」を、「プロレススーパースター列伝」の原田久仁信先生が劇画化したのが「KIMURA」。1巻から10巻まで発売されていたが、最終巻は(なぜか)「力道山プロレス地獄変」上下編として、クライマックスの木村政彦vs力道山が描かれ、ついに完結した。

原作はゴング格闘技連載時に読んでいたが、このKIMURAは別物と言ってもいい。格闘技、太平洋戦争、日本のプロレス界黎明期がドラマチックなストーリーとして描かれ、木村政彦の奔放さ、力道山の執念が原田久仁信先生により力強く表現されている。その迫力たるや!

木村政彦力道山の対決。どちらが強かったのか。そもそも強さとは何なのか。原作「木村政彦はなぜ力道山を殺さなかったのか」で増田俊也氏が導き出した答には戦慄を感じざるおえなかった。個人的に常々思っているのは、プロは競技の優劣だけでは判断されない。競技の実力以外に、コンディションやネットワーク、そしてプロデュースや政治力。それらが総合的な実力の判断になる。そこがアマチュアとの大きな違いだ。

そういう意味では、力道山と木村が対峙したリングでは、力道山の決意と執念が木村を上回った。ただ、自分の理想を実現した挙句に些細なことで命を失った力道山と、力道山戦までは奔放に生き、その後は生き恥を晒しながらも寿命を全うした木村政彦のどちらが勝者たりえたのか。その答を第三者が出すことは難しい。

原田久仁信先生はこの作品を「命がけで描いていく」「全30巻になる大河長編」と決意を語っていたが、予定よりは早く完結(とはいえ「力道山プロレス地獄変」上下編は単行本4冊分くらいのボリュームがある)。60歳を超えての執筆。最後までよく描ききったと思う。長きに渡る連載、本当におつかれさまでした。

再び国内格闘技が盛り上がりを見せる中、格闘技のカルチャー面を支えるゴング格闘技とKIMURAが終わりを迎えた。これも時代の移り変わりだろうか。少し心に穴が空いたような気がする。