美味しい寿司屋の原価をお客様は知りたがっているのか?(お金の話)

f:id:sheepman1130:20171227184348j:plain


アメリカのエバーレーンの影響だと思われるが、最近「原価を公表する」ブランドが話題になっている。

わりと好意的に受け入れられているように思えるが、ブランドをやっている身としてはピンとこない。悪いとは思わないが、良いとも思わない。

なぜかというと

「美味しい寿司屋の原価をお客様は知りたがっているのか?」

ということ。

 

f:id:sheepman1130:20171228223040j:plain

ぼくの勉強不足もあるかもしれないけど、そもそも原価の公表を販売促進に利用しているカテゴリーは他にあるのだろうか。それが販売促進になり得るところが、アパレル業界が作り手都合から脱することができない体質を示している気がする。

ぼくが原価を公表することに対する違和感はふたつあって

1.「他のブランドは様々な理由で25%で出していますが、弊社は中間コストを省いて原価50%なので適正価格で提供できます」というのは、25%で提供するブランドの作り手都合を否定しているようで、自分たちの作り手都合をアピールしている。どちらも内容が違うだけで、結局は作り手都合。

2.そもそも「原価」とは何?

せっかくなのでブランドのお金の話を少し。おそらくブランドによって多種多様なパターンがあると思われるので、参考程度に読んでください。

ひとつの服を作るには、
【A】
・生地代
・洋服に関わる付属品代(タグ、ファスナーやボタンなど)
・その他の付属品代(下げ札など)
・加工代(プリントやウォッシュ加工など)
・縫製代
・仕上げ代
というのが一般的なところだと思う。これを合計した金額がいわゆる原価なのかな?違っていたらごめんなさい。

ただ、経費はそれだけではない。
【B】
・パターン代
・グレーディング代
・プリントや柄のデザイン代
・生地や商品を輸入するなら輸送費や関税
・ライセンスアイテムであればライセンス料
などなど、書ききれないくらいの項目がある。

Aだけを原価とするのか、さらにBを足した金額を原価とするのか、ブランド(会社)によって異なると思う。ぼくはAにBは足さずに別経費扱いしているけど(そもそもデザインは自分でやるので無料)、Bを足すと原価はかなり高くなる。足さなくてもぼくのブランドの原価率は相当高いが、それをブランドの売りにはしない。

このように「原価」の捉え方がブランド(会社)によって異なるので、同じ条件で比較しないとパーセンテージの話も明確とはいいにくい。

加えて話を難しくさせるのは、例えばユニクロと同じクオリティの商品をぼくが作ったとしても、同じ価格にはならないということ。モノは一緒でも、作る量により工賃や生地の仕入れ代は変わってくる。要するに比較しようがないのだ。

さらに話は複雑になるけど、ショップの作り、スタッフのレベル、広告やカタログなどPRのビジュアル、ノベルティなど、お客様にご満足いただくためにかけられる経費は山ほどある。

結局は、お客様にご満足いただけるのか。これに尽きると思う。美味しい寿司であれば、お客様は原価を気にせずに食べに行くだろう。

洋服はただのコストの積み重ねではない。夢、浪漫、想い、歴史、カルチャーなど、様々な要素の積み重ねの上に成り立っていて、そのための価格設定になっている。

と、ぼくは思う。

冒頭の写真は1990年代に購入したBOSEのCDラジカセ。たしか内臓されたスピーカーの角度の反響によりウンタラカンタラということで(詳しくない)、最近のデジタルバリバリ仕様と違ってシンプルなローテクながら、20年以上経った今でも抜群の音を出す。

当時は相当高かったけど、BOSEというブランドに対する信頼感と品質、使用年数、そして音質。いまでも大満足。

もちろん、買うときに「このCDラジカセの原価はいくらかな?」なんて思わなかった。